座禅から学ぶこと 〜事に尽くす〜

今年になってから、知り合いの方にお誘いいただいて、座禅会に参加させていただいています。
参加者には、経営者の方が多いのですが、仕事に必要な基本的なことは、私たちの仕事にも共通すると感じますし、見逃しがちだった視点に気がつかされることも多く、良い機会をいただいています。


毎回、座禅のあと、道元禅師の教えを勉強するのですが、今日のテーマは、「万法に証せらるる」という教えでした。自分の利害を捨てて、物事に取り組めば、全てのモノ、コトからバックアップされるという教えだと理解しています。


本来、私たちの仕事はそうあるべきものだと思います。でも、実際には「あの人が言っているからそうしないといけない」というような形で物事を調整してしまっていることが結構多いと感じます。そういう仕事は、あとに残らないことが多いと感じます。


一方で、色々な人の意見を聞き、きちんと自分の頭で考え、こうするべきだと思って一生懸命取り組んだ仕事は、色々な人に協力してもらえるし、その関係が今でも生きています。こういう仕事をもっとしていかなくてはならないのですが、あまりにもその割合が少ないのです。そして、そういった仕事も、実は限られた人の意見だけを聞いていたのかも知れないと感じています。


このようなお話を講師の先生にしたところ、「人に尽くすのではなく、事に尽くすという感覚を持たなくてはならない。そのためにも、わからないことはどんどん聞いていけばいい」というコメントをいただきました。


本当に、普段人の意見を気にして動くことがいかに多いかを思い知らされます。しかし、人の意見は変わることもあり、プライベートは別として、仕事の中で、特定の人の意見のみを基準にしていると、仕事の軸が定まらなくなる可能性があります。


人ではなく、事に尽くす。 仕事をしていく上で、心がけていきたいと思います。

歴史まちづくりの授業の聴講と、これからについて思うこと

仕事のご縁で、ある歴史まちづくりの大家の先生の講義を聴講させていただいています。


今お邪魔させていただいている授業は、日本の都市の読み方をケーススタディで学ぶというもの。
地方の県庁所在地の現在の地図、過去の各時代の地図、史誌などを参考に、どのような歴史的背景で今の都市ができたのか、土地利用はどのように変遷してきたのかを読み取り、現在の都市デザインに生かそうというものです。


先日、1回目を聴講させていただいたのですが、非常に面白いです。先生の歴史まちづくりに対する愛情が感じられて、とても暖かみのある授業です。次回が楽しみです。



このような分野は学問上は都市計画の分野に属するのですが、古いものを守るだけではなく、歴史や文化をどのように現在のまちづくりに生かしていくかというのは、文化政策上も重要な課題です。このため、文化庁の各施策で、都市計画を専門とされる先生が活躍されています。こういった都市計画やまちづくりという分野は、私もこの仕事についてから初めて関わりを持ったのですが、とても興味深い分野だと感じており、もっと勉強したいと感じています。
他方、先日参加した、文化経済学会でも、創造都市論など、文化をまちづくりに生かすということが大きなテーマとなってきています。そういう意味では、文化に関わる都市政策において、これら2つの分野は深い関連があると思います。どちらかというと、前者はハード、後者はソフトを中心に議論されてきましたが、当然、どちらも重要な要素として双方の分野でトピックとなると思います。


大学院で学問に触れたことをきっかけに、今後も、勉強を続けていきたいと思っています。
自分の専門分野をどうしていくかは、まだ必ずしも明確になってはいないのですが、この一年で、自分がやりとげたいことは、地域や社会の活力を文化の面から支えることだとわかってきました。これは、過疎化が進む自分の故郷の状況が少なからず関連しています。
そのためにも、まちづくりと文化政策の両方の知識を深め、両方を踏まえた施策が打てるようになりたいなと感じています。
4月からは通常の仕事に戻ることになり、なかなかハードではありますが、少しずつでも前に進んでいきたいと思っています!

民俗芸能公演から考えたこと

東アジア共生会議のイベントで、民俗芸能公演を見にいってきました。


岩手県宮古市の黒森神楽、四川省アバ州チベット族・チャン族 民族伝統舞踊、韓国ソウルの鳳山仮面劇、インドネシアバリ島の仮面劇が上演されました。


公演が始まってすぐ、そのレベルの高さに驚き、惹きつけられました。
特に、バリ島の仮面劇は、日本でいう人間国宝レベルの方である、イ・ワヤン・ディビア氏が、仮面劇の上演のために結成した楽団とともに公演され、その繊細な動きに圧倒されました。


今回のテーマは、「東アジアの人々が、豊かな恵みをもたらしてくれる一方で、時には猛威を振るう自然をどのように心にとらえ、あらわしてきたかを民俗芸能を通じて探る」というものでした。


公演の最後、ディビア氏が、伝統芸能を現代に伝えていくのは大変だが、過去に起きた人間同士の争いの醜さや自然災害の脅威を、伝統芸能を通して後世に伝えていくのが私たちの役割だと感じている、という趣旨の発言をされたのが、心に残りました。
このような形で、昔から人間は、天災を受け入れ、伝統芸能の中に取り入れ、後世に伝えることで、つきあってきたのだなあと。


改めて、伝統芸能の持つ意味を考えさせられました。

シアターマネジメント

大学の講義で、シアターマネジメントという講義をとっています。


新国立劇場でオペラ上演の企画運営の担当者が講師で、オペラや劇場の歴史、製作過程など、舞台技術のマネジメントついて学ぶことが出来ます。伝統文化には携わっていたものの、舞台芸術にはあまり詳しく無かったので、とても勉強になっています。


その講義で、新国立劇場のオペラ公演の最終通し稽古(ゲネプロ)を見学する機会をいただきました。オーケストラの服装以外は本番そのままのリハーサルで、賛助会員などの関係者には公開しているもののようです。


演目は「ルサルカ」。実は、オペラを見るのは初めてだったのですが、すっかり別世界に引き込まれました。とても豊かな気持ちになり、ファンになって何度も見に行く人の気持ちがわかります。その舞台装置の規模、出演者の数に驚き、歌舞伎などの日本の伝統芸能と違って、商業ベースに乗らないのは仕方ないと実感しました。


また、舞台をやっていない日には、劇場の見学をさせていただきました。奈落、舞台セット、舞台裏など、オペラの仕組みがよくわかり、前回のゲネプロ見学と合わせて2倍楽しむことができました。


もっとオペラについての知識を深めていきたいです。

文化経済学会に参加して

初めて学会に参加しました。


青山学院大学で行われた文化経済学会の全国大会を聞きに行きました。青山学院の授業を聴きに行っている関係で、主催者側に知り合いがいたこともあり、入りやすかったです。


地域におけるメディア芸術の役割、学生の研究発表コンペティション、文化経済学会の10年を振り返る公演など、学会の様子や取り扱っている分野を知るには良かったです。やはり、飛び込んでみないとわからないことって、沢山あるんだなあと最近よく考えさせられます。忙しさにかまけているとおろそかになりがちなことですが、実はとても重要なことだったと反省します。


今回参加してみて、改めて、文化政策が扱う分野の幅広さを感じました。


これからも研究活動は続けて行きたいと思うので、このような場も活用して勉強させてもらいたいと思っています。

国際会議に参加して

所属しているプログラム主催の国際会議がありました。

テーマは創造都市。
フランス、ドイツ、イタリア、韓国、日本からの参加者から、創造都市についてのプレゼンテーションが行われました。
各都市の事例紹介がメイン。
各国、都市の取り組みを知るとともに国際会議の雰囲気を感じることができました。


創造都市も、歴史文化まちづくりも、目指すべきところは同じなんですよね。
要は、どのように持続的な形で地域を盛り上げ、活性化を測っていくか。

まさに地方の時代。
私も故郷が過疎地なので、どうやったら地方が持続可能な活性化を図ることができるのか、とても興味があります。
なので、今後もこの課題には関わって行きたいと思います。

現地調査12 太宰府市へ

 現地調査の最終地である、太宰府市へ。

 今回も文化庁の、モデル事業の担当者と一緒。
論文テーマの事業担当者が親しい友人でとても助かっている。何事も、人とのつながりだなあと感じる今日このごろ。


 太宰府市は、歴史文化基本構想のモデルとなる取組みを平成17年から行っていたところ。しかし、当時は、周囲がその理念をなかなか理解できず、計画がなかなか実現しなかった。今回の文化庁のモデル事業により、その計画が具体的に動き出している。このため、他のモデル事業実施自治体よりも、一段階次のステップに進んでいることになる。


 そのようなわけで、太宰府市の取組みは、平成18年ごろに自分が文化庁で働いているときから聞いていたので、今回、実際に担当の方からお話を聞くのは楽しみだった。


 太宰府では、地方分権の流れを受けて、地域にある文化財を、どのように市自身で守っていくかということを考えていた。そうして行き付いたのが、既存の文化財の類型や指定基準に縛られず、市民が大切だと思うモノやコトを市民自身で守っていく、という仕組みづくりだったという。太宰府では、「太宰府市民遺産制度」として、市民からの提案で、太宰府にとって必要な文化遺産を認定、登録していくという取組みが始まっている。


 地域にとって大切なお祭りや慣習、祠などが、地域で守られ、継承されていく。昔は当たり前に行われていたことだが、現在の地域社会では機能しづらくなっている。
 また、文化財行政の中で守ろうとしても、優品主義の発想から抜け出して、そのような法律上指定されていない文化遺産を守って行くのは難しい。
 そのような意味で、太宰府の取り組みはこれまでのパラダイムを転換するものである。


 今回は、実際に、市民遺産の一つを見せていただいた。
 「芸術家 冨永朝堂(とみながちょうどう)」に関連する文化遺産で、アトリエである「吐月叢」にお邪魔し、冨永朝堂の息子さんで、市民遺産の提案団体であるNPO法人「歩かんね太宰府」の代表の富永さんからお話を聞いた。


 「歩かんね太宰府」という市民発の活動について伺うことができ、それが「市民遺産」の仕組みをつくることによって、更に盛り上がって行くという行政と市民の協働の取り組みを感じることができた。


 また、その後、市民遺産候補を育成している現場も見せていただいた。


 その後、太宰府市内の文化財を色々と見せていただく。
 太宰府は、市内のかなりの面積を史跡が占める。


 特別史跡である水城跡。


 同じく特別史跡である大宰府跡。


 また、旧街道沿いに点在する、歌碑、神社、天満宮の鳥居、常夜灯など、大宰府固有の物語にまつわる文化遺産について説明いただいた。


どれも、一見なかなかわかりづらいものばかりだが、説明を聞くと、風景が違って見えてくる。このような物語を拾い上げ、後世に伝えて行くのが、歴史文化基本構想の一つの役割だと感じる。

 
 観世音寺では、多くの重要文化財を見せていただいた。


 大宰府天満宮へ。


 参道の建物の中には、歴史的な建物も残っている。その一つにお邪魔させていただいた。木造三階の趣のある建物だった。
 天満宮にお参りし、九州国立博物館へ抜け、そこから国博通りを下って天満宮まで再び降りてきた。


 最後の現地調査で、大宰府の取り組みを見ることができてとても参考になった。
 感じるのは、やはり、自治体で頑張っておられる担当の方の少しでも力になれればということである。
 微力ながら、頑張りたいと思う。