刀匠研修

備前長船刀剣博物館にて開催された、文化庁主催の刀匠研修に事務局として参加しました。


一般に、刀剣類は、「銃砲刀剣類所持取締法」で所持が禁止されています。しかし、鑑賞用の美術刀剣については、都道府県教育委員会へ登録することで、所持することが可能となっています。美術刀剣として登録を受けるためには、刀匠(刀鍛冶)が、その都度製作承認を受けて作ったものでなくてはなりません。
 最初の製作承認を受けるためには、文化庁の研修に合格し、かつ、一定期間の修行を経ていることが必要で、今回の研修は、その要件に当たる研修です。


 全国から、修行を始めて数年の方々が集まり、8日間で、原料である玉鋼から、刀剣を製作します。講師は、実績ある刀匠の先生方。各工程毎に評価がなされ、一定の技量に満たなかった場合には、そこで受講停止となる厳しいものです。


 日本刀の製作工程は以下のとおりです(参考:日本美術刀剣保存協会HP)。


<材料>
 日本刀の素材は、日本古来の製鉄技術であるたたらによって生産されます。
 たたらにより生産された広義の鉄のうち、炭素量0.03〜1.7%のもので、加熱して、たたけば伸びるものを「鋼」と呼び、この「鋼」に分類されるもののうち、特に破面が均質で良好なものを「玉鋼(たまはがね)」といい、これはそのまま刀剣の素材になります。


<工程>
○水へし・小割
 玉鋼を熱して厚さ5mm程度に打ち延ばし、次にこれを2〜2.5cm四方に小割りして、その中から良質な部分を3〜4kg選び出し、直接の材料とします。


○積み沸かし
 小割りにされた素材をテコに積み上げて、ホド(炉)で熱します。この過程で素材が充分に沸かされ(=熱せられ)一つの塊となります。


○鍛錬、皮鉄(かわがね)造り
 炭素の含有量を調整し不純物を除去するために、鍛錬を行います。鍛錬の方法は、充分沸かされた素材を平たく打ち延ばし、さらに折り返して2枚に重ねます。この作業を約15回程度行います。
 鍛錬によって、いわゆる皮鉄(=軟らかい心鉄をくるむ、硬い鉄のこと)が作られます。15回ほどの折り返し鍛錬の結果、約33,000枚の層状となります。日本刀が強靭である理由のひとつがここにあります。


○心鉄(しんがね)造り、組み合わせ
 皮鉄造りに前後して、心鉄を作ります。日本刀は「折れず、曲がらず、よく切れる」という3つの条件を追求したものですが、切れるためと曲がらないためには鋼は硬くなければならないし、逆に、折れないためには鋼は軟らかくなくてはなりません。この矛盾を解決したのが、炭素量が少なくて軟らかい心鉄を炭素量が高くて硬い皮鉄でくるむという方法です。これは日本刀製作の大きな特徴となっています。

 私が立ち会ったのは、次の土置きの工程からでした。


○土置き(土取り)
 耐火性の粘土に木炭の細粉、砥石の細粉を混ぜて焼刃土(やきばつち)を作ります。これを刃文の種類に従って、土塗りをしていきます。焼きの入る部分は薄く、他は厚く塗ります。


(土置きされたもの)


○焼き入れ
 土置きされたものを、約800度くらいに熱します。炉はふいごを操作して温度調節をします。

 頃合いを見て急冷します。


○仕上げ
焼き入れが終わると、曲がり、反りなどを直して荒砥ぎをします。


○銘切り
 最後に、中心(なかご)の鑢仕立てを行い、目釘孔(めくぎあな)を入れ、最後に作者の銘を入れます。


(銘を入れているところ)


(完成した刀剣)



(講師による評価の様子)


 日本刀の製作工程を学ぶことが出来、大変勉強になりました。
 全国から集まった刀匠の卵の方々は、バックグラウンドも様々です。一人前になり、生計を立てるまでは厳しい世界ですが、貴重な日本文化の継承者として、是非頑張っていただきたいと思います。